日常診療データを用いた褥瘡予測AI

入院患者ケアにおいて、褥瘡の発生と重症化の予防は重要な臨床的課題である。患者背景に基づく種々のリスク因子が明らかにされている一方、治療内容や施設因子に沿った褥瘡リスクの同定とその精緻な予測は、いまだ遅々として進んでいない。

ドイツ・ドレスデンに所在するカール・グスタフ・カールス大学病院などの研究チームは、ノンパラメトリックなモデリングアプローチとしてBayesian Additive Regression Trees(BART)を用い、14万症例を超える入院患者データから褥瘡の発生予測AIを構築した。研究成果はScientific Reportsからこのほど公開されている。研究成果からは、日常診療データから褥瘡発生リスクを高精度に予測できるだけでなく、換気の程度や1時間以上の麻酔、病棟数など、これまで指摘されることが少なかった新たなリスク因子についても、その重要性を明らかにしている。

著者らは「麻酔は無動状態の代理指標と考えられるため、1時間ごとの体位変換が肝要となる」点を強調している。本予測モデルでは感度が実臨床水準に達しておらず、さらなる改良が望まれる一方、検証すべき項目を新たに浮き彫りとした点でも、本研究は高い評価を得ている。

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The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員准教授など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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