「床ずれ」や「褥瘡」と呼ばれる圧迫傷害(pressure injuries)は、患者に多大な苦痛を強いるだけではなく、併存疾患の誘発と転帰の悪化、医療費の増大を招く。米ミシガン大学看護学部のチームは、電子カルテデータから褥瘡リスクを評価するためのAIアルゴリズム構築に取り組んでいる。
このほどBMC Medical Informatics and Decision Makingから公開されたチームの研究論文によると、ベッドの不動性やポジショニング、感覚障害、入院期間といった既知のリスク因子に加え、電子カルテに含まれる種々の変数から「褥瘡発症確率」を推定することを試みた。2.3万名に及ぶ電子カルテ情報に基づき、チームはモデルベースの統計的手法だけでなく、モデルフリーのAI手法も同時に構築・評価した。AIの学習には、不整合で不完全、不均質、時間変動のあるデータを用いている。結果、線形回帰モデルやニューラルネットワークと比較して、ランダムフォレストは一貫して最適な予測能を示していた。興味深いことに、既存の評価指標(Bradenスケール)の利用有無に関わらず、その精度を維持していたという。
著者らは「この褥瘡予測モデルは、発症リスクの事前スクリーニングに向けた第一世代のAIガイダンスとなる」としており、褥瘡という深刻な医療ニーズに対応する新しい介入策の設計・実施・評価への基盤を提供するものとして、成果の重要性を強調している。
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