AIによる褥瘡予測

「床ずれ」や「褥瘡」と呼ばれる圧迫傷害(pressure injuries)は、患者に多大な苦痛を強いるだけではなく、併存疾患の誘発と転帰の悪化、医療費の増大を招く。米ミシガン大学看護学部のチームは、電子カルテデータから褥瘡リスクを評価するためのAIアルゴリズム構築に取り組んでいる。

このほどBMC Medical Informatics and Decision Makingから公開されたチームの研究論文によると、ベッドの不動性やポジショニング、感覚障害、入院期間といった既知のリスク因子に加え、電子カルテに含まれる種々の変数から「褥瘡発症確率」を推定することを試みた。2.3万名に及ぶ電子カルテ情報に基づき、チームはモデルベースの統計的手法だけでなく、モデルフリーのAI手法も同時に構築・評価した。AIの学習には、不整合で不完全、不均質、時間変動のあるデータを用いている。結果、線形回帰モデルやニューラルネットワークと比較して、ランダムフォレストは一貫して最適な予測能を示していた。興味深いことに、既存の評価指標(Bradenスケール)の利用有無に関わらず、その精度を維持していたという。

著者らは「この褥瘡予測モデルは、発症リスクの事前スクリーニングに向けた第一世代のAIガイダンスとなる」としており、褥瘡という深刻な医療ニーズに対応する新しい介入策の設計・実施・評価への基盤を提供するものとして、成果の重要性を強調している。

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1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。