WHO – 高齢者を置き去りにしないAI開発戦略

このほど世界保健機関(WHO)が明らかにした政策概要では、医療AIにおけるエイジズムやバイアスに対抗するための新しい戦略を提示している。

WHOが公開した「Ageism in artificial intelligence for health」によると、「AIは個人レベルだけでなく集団アプローチによる大幅なヘルスケア改革を実現し得る」とする一方で、「社会の潜在的なバイアスを複製し、既存ケアにおける格差を悪化させる可能性がある」と指摘する。人種・性別・社会経済的因子など、他の倫理的課題にも対処する必要があることを認めながら、今回の概要では、高齢者に影響を及ぼすバイアスに焦点を当てる。実際、高齢者はAIツールのトレーニングデータセットから除外されたり、市場調査や設計、検証から外れることがしばしばある。

これらに対処し、高齢者における医療AIの利点を最大化するための具体的戦略として、高齢者参加型AIデザイン、年齢構成を考慮したデータ収集、高齢者とこれを取り巻く医療者に向けたデジタルインフラの整備およびデジタルリテラシーへの投資、バイアス研究の加速、などを挙げている。なかでも、WHOは「多様な年齢層のデータサイエンスチーム」を提案しており、これは同領域における人的リソースの世代的な多様化と、能力開発を若年層に絞らない政策を導くことが考えられ、同政策概要に基づく今後の展開が非常に興味深い。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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