Tempo – 乳がん検診を個別化するAIツール

マンモグラフィは乳がん検診のゴールドスタンダードだが、そのガイドラインは「○○歳〜××歳の女性は毎年マンモグラフィを受けるべき」といった画一的な設定にならざるを得ず、個人に最適化した検診を行うためのデータ活用とツール開発は遅れている。米MITコンピュータサイエンス・人工知能研究所(CSAIL)の研究者らは、「機械学習を用いて、個別最適化した検診を行う技術」を開発している。

MITのリリースでは、リスクベースの検診ガイドラインを作成するツール「Tempo」を紹介している。Tempoは、誰がどのタイミングで検診および診断を得たかを解析するAIモデルを用い、6ヶ月後や3年後といった個人ごとに最適なマンモグラフィの再受診時期を推奨する。幅広いスクリーニング設定に対応し、利用する臨床医はツールに対して新たなトレーニングの必要なく、早期発見とコストのトレードオフを選択できる。モデルを外部検証したスウェーデンのカロリンスカ研究所では、Tempoの利用によって従来の定型的な年1回の検診よりも優れた早期発見を達成しながら、マンモグラフィの必要施行数は全体で25%削減されたとする。米マサチューセッツ総合病院(MGH)では、早期発見の効果は約4.5ヶ月分とシミュレートされている。Tempoの検証成果はNature Medicine誌に発表された。

インタビューに対し、論文著者でCSAILの博士課程在籍中のAdam Yala氏は「Tempoのフレームワークは柔軟で、リスクモデルやアウトカム指標がさらに洗練されていくことで、実用性の向上が期待できる。この技術をがん検診の個別化に役立てたい」と語っている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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