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スタンフォード研究 – 手術後の長期オピオイド使用を予測する機械学習アルゴリズム

麻薬性鎮痛薬であるオピオイド系鎮痛薬はその離脱困難や乱用が問題となる。特に米国において深刻な社会問題となっているが、このほどスタンフォード大学の研究チームは、青年期の外科手術後患者において「オピオイド使用が長期化するリスクを予測」する機械学習アルゴリズムを構築した。

研究チームが3日、Anesthesia & Analgesia誌からオンライン公開した研究論文によると、2011年から2017年まで7年間における保険請求データベースに基づく手術症例データからこのアルゴリズムを導いたという。対象となったのは12~21歳の青年期にある患者群で、ランダムフォレストや勾配ブースティング決定木、XGBoost、ラッソロジスティック回帰など複数の機械学習モデルを利用し、患者情報・臨床データから「術後3~6ヶ月後にオピオイドの処方あり」を予測するアルゴリズムをトレーニングした。

186,493の症例に対して8,410(4.51%)にオピオイド長期使用が認められたが、最高の識別パフォーマンスを示したアルゴリズムではAUC 0.711となり、特定の手術ではさらに高精度な予測力を示していた(脊椎固定術で0.823、歯科手術で0.812など)。また、オピオイド長期使用と最も関連する変数は「術前1年間でのオピオイド使用歴」であった。研究チームは「この機械学習アルゴリズムが中等度から高度の予測力を有し、オピオイド長期使用における患者リスクの評価および予防措置の実施に貢献する可能性がある」ことを指摘している。

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