医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例眼底画像を用いて心房細動患者における認知障害を特定する

眼底画像を用いて心房細動患者における認知障害を特定する

心房細動(AF)は、認知症の独立したリスク因子である。しかし、認知機能の評価には時間がかかるため、AF患者のスクリーニングには組み込まれていない。AF患者における軽度認知障害への介入を遅らせないためには、簡便なスクリーニングツールが必要である。中国の研究チームは、AF患者における認知障害のスクリーニングを目的として、眼底写真を用いた深層学習モデルを開発し、Heart Rhythm O2発表した。

研究チームによると、2021年から2023年までに眼底評価と認知機能評価(Mini-Mental State Examination)を受けることに同意したAF患者899名を対象とした。4種類の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を組み合わせたモデルが開発され、眼底写真のみに基づくビジョンアンサンブルモデルと、眼底写真に加えて4つの変数(教育レベル、年齢、心不全の有無、BMI)を考慮したマルチモーダルモデルで認知障害の検出能力が検証された。その結果、AUCはビジョンアンサンブルモデルで0.855、マルチモーダルモデルで0.861と高精度な結果となり、かつ両者に有意差は認められなかった。ビジョンアンサンブルモデルは、特に網膜血管と視神経乳頭周辺領域に注目して予測していることが明らかになっている。

実際の臨床現場では、認知障害が深刻化してから受診するケースが多い。著者らは、「現在、眼底写真の撮影がスマートフォンなどによってますます簡便になっており、本深層学習モデルを用いることで、AF患者における認知障害を迅速かつ効率的にスクリーニングできる可能性がある」と述べている。

参照論文:

Screening cognitive impairment in patients with atrial fibrillation: A deep learning model based on retinal fundus photographs

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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