前立腺がんの疑い症例に対してMRIを実施することで、不必要な生検を回避できる可能性がある。過去の研究では、AIがMRIによる診断精度を向上させる可能性が示されたが、サンプル数やMRI画像の読影者不足によりエビデンスは限られていた。オランダの研究チームは、AIを用いたMRIによる前立腺がんの画像読影が、AI支援なしの場合よりも優れているかどうかを大規模観察研究として実施し、その結果をJAMA Networkに発表した。
研究チームによると、17カ国53施設から61名の画像読影者(専門家34名、非専門家27名)が参加し、AI支援の有無にかかわらず、PI-RADS(Prostate Imaging Reporting and Data System)に基づいてMRI画像を評価した。観察対象として、平均年齢65歳、平均PSA値7.0mg/mLの男性360名(前立腺がん患者122名)が選ばれ、合計360枚のMRI画像が評価された。その結果、AI支援なしではAUCが0.882であったのに対し、AI支援ありではAUCが0.916となり、有意なパフォーマンスの改善が示された。また、PI-RADSスコアが3以上の場合、感度はAI支援ありで96.8%、AI支援なしで94.3%であり、特異度はAI支援ありで50.1%、AI支援なしで46.7%であった。さらに、読影者を経験別に検討したところ、非専門家の方が専門家よりもAI支援の恩恵を受けることが示された。
本大規模観察研究により、AIを用いることで前立腺がんのMRI画像診断のパフォーマンスが向上することが示され、これは先行研究と一致する結果であった。臨床現場への本システムの導入や業務効率の改善に関する見通しについては、さらなる研究が必要である。
参照論文:
AI-Assisted vs Unassisted Identification of Prostate Cancer in Magnetic Resonance Images
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