院内発症の菌血症や真菌菌血症(Hospital-onset bacteremia and fungemia:HOB)の発症原因は複雑であるが、過去の研究では主に患者の特性に焦点が当てられていた。ワシントン大学の研究チームは、患者の特性以外の要因を考慮したHOB発症の予測に関する機械学習モデルを開発し、JAMA Network Openに発表した。
本研究は、2021年に入院した52,442名の患者を対象とした。そのうち34,885名が72時間以上の入院期間を有しており、556名がHOBを発症した。研究チームは、XGBoostを用いてHOB発症の予測能力を、患者の特性のみに基づく場合と、患者特性に加えてその他の要因も含めた場合に分けて比較した。患者以外の要因としては、入院前の救急外来での待機時間、HOB発症の7日前に接触した医療従事者の数、同室に抗緑膿菌作用のあるβラクタム薬を投与されていた患者の有無などが考慮された。その結果、患者以外の要因を加味したモデル(AUC 0.88)は、患者の特性のみに基づくモデル(AUC 0.85)よりも優れた予測能力を示した。SHapley Additive exPlanations(SHAP)分析によると、最も重要な特徴量として、患者特性のみに基づくモデルでは抗緑膿菌作用のあるβラクタム薬の投与が挙げられ、患者以外の要因を加味したモデルではHOB発症以前のICU滞在期間が長いことや医療従事者との接触人数が多いことが挙げられた。
本研究では、患者特性以外の要因もモデルの変数に組み入れることで、HOB発症の予測精度が向上することが示された。研究チームは「広域スペクトラムの抗生物質は、HOB発症のリスクを高める可能性があるため、投与を慎重に検討すべきである」と強調した。
参照論文:
Integrating Nonindividual Patient Features in Machine Learning Models of Hospital-Onset Bacteremia
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