一般集団を対象としたマンモグラフィ検診は、乳がんによる死亡率を減少させる効果が認められている一方で、マンモグラフィ感度の限界、放射線科医の習熟度などの課題が存在する。この課題に対し、オランダの研究チームが、検診の精度向上に寄与する高性能なAIの研究成果を発表した。同研究はThe Lancet Digital Healthに掲載されている。
本研究では、20万件の正常データと1万件の乳がんデータを用いて、画像分析アルゴリズムと畳み込みニューラルネットワークから成る「Transpara」システムの学習を行った。本システムは、入力画像に対して、病変部の検出と病変疑いスコア(1-100)、悪性度スコア(1-10)を出力するものである。タスクとして、42,236件の2Dマンモグラム及び4年フォローアップのアウトカムデータ(検診で発見されたがん、検診から22ヶ月以内に発見されたがん:中間期がん、検診から22ヶ月後に発見されたがん:将来診断がん)を用い、ヒトによる読影と同システムを用いたAI読影を、様々なパターンで組み合わせた際の精度比較を行った。その結果、ヒト読影+AI読影では、ヒトによる二重読影と比較して、8.4%の感度上昇が見られた。特に、AI読影は人の二重読影が見逃した中間期・将来診断がんの多くを拾い上げた。これらのがんは最終的に浸潤性・腫瘍径が大きい傾向にあり、臨床的意義が高い可能性がある。この効果は、乳房密度に依存しないことが示されている。
研究チームは「ヒト読影にAI読影を組み合わせることで、精度向上を図ることが可能となった。だが、同時に特異度がやや下がるという難点があり、スクリーニング検査における再検査率を上昇させることは実運用上の課題になりうる。閾値を適切に設定することで、実臨床への運用に活かしたい」と述べている。
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