化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は、化学療法を受けている患者の30〜40%に発生し、疼痛、感覚異常、運動機能障害など多様な神経症状を引き起こす。症状が重篤な場合には、化学療法の減量や中止を余儀なくされることがあり、その予防および管理は非常に重要である。近年、CIPNを予測するための深層学習モデルの研究が進展しているが、韓国の研究チームはマルチモーダルのトランスフォーマーモデルを用いたCIPN予測モデルを開発し、The Science Partner Journalsに発表した。
8月5日に発表された論文によると、研究チームは2020年から2025年に化学療法を受けた5,276名の患者データ(うちCIPN患者1,892名)を分析した。マルチモーダルのトランスフォーマーモデルは、畳み込みニューラルネットワーク、Long Short-Term Memory(LSTM)、およびXGBoostと比較して優れたパフォーマンスを示し、AUCは0.93、正解率は88.5%、感度は85.3%、特異度は90.1%であった。また、SHapley Additive exPlanations(SHAP)分析の結果、CIPN予測精度に寄与する重要な特徴量として、抗がん剤投与量(SHAP値=0.52)、末梢神経MRIの異常(SHAP値=0.41)、心電図異常(SHAP値=0.38)、CYP2C8遺伝子変異(SHAP値=0.34)、および糖尿病(SHAP値=0.31)が特定された。
今回の研究結果は、マルチモーダルのトランスフォーマーモデルがCIPNの高リスク患者を早期に特定するのに寄与し、臨床医が抗がん剤の投与量を含むがん患者の治療計画の立案に役立つ可能性を示しており、今後の前向き臨床試験におけるモデルの検証が期待される。
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