前立腺がんによる死亡者の大半は、転移性または局所進行性の状態にあるが、これらの患者群に焦点を当てた予後予測AIモデルはまだ実用化されていない。英国、米国、スイスの国際共同研究チームは、進行性前立腺がん患者を対象とした大規模無作為化第三相試験(STAMPEDE試験)のデータを用いて、以前に開発されたマルチモーダルAIモデル「ArteraAI Prostate」の予後予測能力を評価し、その成果をThe Lancet Digital Healthに発表した。
研究チームは、STAMPEDE試験で募集されたアンドロゲン遮断療法開始前の転移性および高リスク非転移性前立腺がん患者から採取された病理スライドのライブラリを構築した。この病理組織に加え、年齢、PSA値、がんのステージ分類などの臨床データもアルゴリズムに組み込まれた。2005年から2016年までに112施設から登録された3,167名(非転移性1,575名、転移性1,592名)が解析に含まれ、ArteraAI Prostateの予後予測能力が評価された。その結果、アルゴリズムは前立腺がん特異死亡率と強い相関関係があることが示され(ハザード比1.40)、有用性が確認された。
著者らは「生検スライドには進行例でも有用な予後情報が含まれ、MMAIを疾患負荷と組み合わせることで強化治療のかけ過ぎ、かけ足りないを減らせる」とコメントする。将来的には、実臨床において本モデルにより予後良好と判定された患者群に対してはホルモン療法の治療期間を短縮し、一方で予後不良と判定された患者群には治療を強化するなど、個々の患者に応じた治療計画を立てることが可能になると考えられる。
参照論文:
関連記事: