英国の研究チームがダウン症患者57名を対象とした研究で、血液バイオマーカーと認知機能検査を組み合わせて機械学習によりアルツハイマー病(AD)の進行段階を予測する手法を開発したことがAlzheimer’s & Dementiaに発表された。ダウン症患者は21番染色体の3倍体によりアルツハイマー病リスクが極めて高く、一般集団より約25年早い40歳頃から病理変化が現れることが知られている。
研究では20~35歳の若年群29名と36~59歳の高年群28名に分け、血漿中のアミロイドβ42/40比、リン酸化タウ181・231、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の5種のバイオマーカーと4つの認知機能テストの結果をイベントベースモデルで解析した。その結果、最初にアミロイドβ42/40比の低下とNfLの上昇が起こり、続いて記憶機能の低下が生じることが判明した。その後リン酸化タウの増加と実行機能の低下、最終的に視覚運動機能の低下とGFAPの上昇という段階的進行パターンが明らかになった。主成分分析と一般化加法モデルにより、39~52歳の年齢範囲でバイオマーカー変化が最も顕著であることも示された。このタイミングは平均診断年齢53.8歳の約15年前に相当し、統計的に有意な変化を示した(P<0.001)。
研究者らは「ダウン症におけるAD進行パターンが家族性・孤発性ADと類似していることが確認され、血漿バイオマーカーの組み合わせが前臨床段階の診断や治療介入のタイミング決定に有用である」とコメントしている。この成果により、より効果的な早期診断システムの構築と、治療効果を評価する臨床試験の設計改善が期待される。
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