AI導入がもたらす内視鏡医スキル低下の可能性

大腸内視鏡検査におけるAIを使用したポリープ検出は、ポリープ検出率を向上させることが知られているが、AIの継続使用により「内視鏡医自身のポリープを検出するスキル」が低下する可能性がある。ポーランドの複数の内視鏡センターで行われた観察研究が、そのリスクを示し、Lancet誌に報告された。

ポーランドの研究チームは、ポリープ検出AIツールを導入したポーランドの4つの内視鏡センターで、AI導入前後での、AI非使用下の大腸内視鏡検査における内視鏡医のポリープ検出率の変化を調査した。その結果、内視鏡医のポリープ検出率は、AI導入前は28.4%から、AI導入後22.4%へと有意に低下し、絶対差は-6.0%であった(p=0.0089)。

研究者らは、これは特定のAI機器に限った現象ではなく、人間がAIに過度に依存する傾向を反映している可能性が高いと指摘。今後はAIが医師の診断スキルにどのような影響を及ぼすか、そのメカニズムを明らかにする研究が必要だと述べている。

参照論文:

Endoscopist deskilling risk after exposure to artificial intelligence in colonoscopy: a multicentre, observational study

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本吉絢
本吉絢
東京女子医科大学卒(MD)、同大学医学研究科博士課程修了(PhD)、米University of Washington研究員を経て、現在は神戸アイセンターにてリサーチアソシエイトとして眼科AI研究に取り組む。趣味は自然と猫や馬など動物たちを愛でて静かに過ごすこと。
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