ライム神経ボレリア症(Lyme neuroborreliosis:LNB)は、ボレリア感染が中枢神経系に波及して発症する疾患であるが、従来の血清学的検査や髄液所見のみでは診断精度に限界がある。こうした課題を背景に、デンマークの研究チームはプロテオミクス解析と機械学習を組み合わせた新たな診断モデルを開発し、その成果をNature Communicationsに報告した。
研究チームによると、LNB患者、ウイルス性髄膜炎患者、対照群から採取した308検体の髄液と175検体の血漿を高分解能質量分析装置で解析し、髄液では約1,800種類、血漿からは約400種類のタンパク質を同定した。分析対象となった654種類のタンパク質からなるプロテオームデータを基に機械学習モデルを構築し、その結果、ロジスティック回帰モデルはウイルス性髄膜炎とLNBの分類において、AUC0.92と最高のパフォーマンスを示した。また、サポートベクターマシンはAUC0.93を記録し、対照群とLNBの分類において最良の結果を示した。さらに、SHAP(Shapley Additive Explanations)分析により、自然免疫および液性免疫応答、神経内分泌シグナル伝達、ならびに細胞損傷に関連する因子が重要な特徴量として特定された。
研究チームは、「こうしたタンパク質シグネチャーを活用することで、従来の方法では困難だったLNBと他疾患の高精度な鑑別が可能になる」と指摘した。今後は血液を用いた非侵襲的診断法への応用を目指しており、感染症領域におけるAIとプロテオミクスの融合による新たな可能性を示す成果となった。
参照論文:
The diagnostic potential of proteomics and machine learning in Lyme neuroborreliosis
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