世界の50%以上がかかる歯髄炎や根尖性歯周炎などの歯内疾患の診断を、人工知能で高精度に行う手法を提案する研究が報告された。中国の研究チームは、従来は歯科医師がレントゲン画像と臨床所見で判断していた歯の神経や歯根の炎症・壊死などの状態分類をディープラーニングで自動化することを目的とし、「MSViT」という改良型ビジョントランスフォーマーモデルを開発し、その成果をScientific Reportsにて発表した。
研究では、まず公開されている疾患ラベルを付けたX線歯科画像のデータセットを用いた。入力画像を分割して階層的に特徴を抽出するMSViTアーキテクチャを採用し、さらにカオス的粒子群最適化(CPSO)と逐次二次計画法(SQP)を組み合わせた独自のハイブリッド手法でモデルを調整した。その結果、「不可逆性歯髄炎」「歯髄壊死」「過敏性象牙質」といった7種類の疾患状態を平均97.72%の精度で識別することに成功した。特筆すべきはモデルの「軽さ」であり、既存の代表的なモデル(VGGNet-19など)と比較してメモリ消費量やパラメータ数を大幅に削減しながらも、それらを上回る性能を示した。これは、高性能な計算機がない一般的なクリニックのPC環境でも動作可能であることを示唆している。
今回の研究は、サンプル数が少ない歯内疾患の画像診断におけるAI活用の可能性を示すものである。著者らは、従来は専門家の経験や主観に依存しやすかった根管疾患の判定を、AIによって客観化し、誰でも同じ基準で診断できる基盤を構築した点を強調した。
参照論文:
AI meets endodontics a deep learning approach to precision diagnosis
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