医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例義手の操作精度は「ゲーム」で向上するか? - 強化学習とプレイデータの活用

義手の操作精度は「ゲーム」で向上するか? – 強化学習とプレイデータの活用

筋電義手の制御において、ユーザーの運動意図を正確に読み取ることは喫緊の課題である。従来は、あらかじめ記録された筋電データを用いた教師あり学習が主流であったが、日常生活での自然な筋肉の動きを再現した高品質なデータを収集することは困難であった。これに対し、スウェーデンのチャルマース工科大学などの研究チームは、リズムゲームを通じた「強化学習」を用いることで、義手制御の精度と安定性を向上させる手法を発表した。同研究はIEEE Transactions on Biomedical Engineeringに掲載されている。

本研究では、簡単なリズムゲーム環境を構築し、15名の参加者のプレイデータを用いて制御モデル(AI)のファインチューニングを行った。具体的には、事前に教師あり学習で訓練されたモデルを出発点とし、ゲームプレイ中のフィードバックを基に強化学習(AWACアルゴリズム)でモデルを更新させた。リズムゲームが選ばれた理由として、日常動作と同様に正確なタイミング、持続時間、および動作制御を必要とすることが挙げられている。その結果、ゲームプレイ中の意図推定精度(EMR)は2倍以上に向上し、ゲームとは独立した純粋な動作テストにおいても39%の精度向上が確認された。

特筆すべきは、精度だけでなく動作の安定性も改善された点である。強化学習後のモデルでは、誤った動作切り替えの回数が減少し、ユーザーの意図した動作がより安定して出力されるようになった。研究チームは「オフラインでの学習と実生活での使用の間のギャップを埋めることができた」と結論づけている。

参照論文:

Fine-Tuning Myoelectric Control Through Reinforcement Learning in a Game Environment

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村上 遼
村上 遼
大阪大学大学院機械工学専攻 修士課程修了。ロボット技術とMEMS技術を融合した血液検査システムに関する研究を行う。外資系医療機器メーカーAにて臨床開発として勤務。外資系医療機器メーカーBにてビジネスデベロップメントとして新規事業開発に従事。現在、米ウースター工科大学 ロボティクス専攻 博士課程にて、医療ロボティクスおよび医療画像(光音響、超音波等)の研究に従事。
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