脳卒中などの後遺症として生じる構音障害は、発話に必要な筋肉が麻痺し、患者のコミュニケーション能力と生活の質を著しく低下させる深刻な課題である。英ケンブリッジ大学などの研究チームは、喉の振動を感知して自然で流暢な発話を再構築するウェアラブルデバイス「Intelligent Throat」を開発した。実際の脳卒中患者においてその臨床的有効性が実証された本研究成果は、学術誌Nature Communicationsにて公開された。
本研究の核心は、超高感度な繊維型歪みセンサーと、大規模言語モデル(LLM)を高度に統合した点にある。このデバイスは、首に貼付するだけで、声帯の微細な振動と頸動脈の脈拍を同時に検知する。従来の技術と一線を画す新規性は、LLMエージェントが会話の文脈を理解して不明瞭な発音や言い間違いをリアルタイムで修正する機能に加え、脈拍データからユーザーの感情状態(興奮やリラックスなど)を読み取り、抑揚のある「感情豊かな音声」を合成できる点にある。実際に5名の重度構音障害を持つ脳卒中患者を対象とした試験では、発症以来2年間流暢に話せなかった患者が、このシステムを通じて家族と自然な会話を交わすことに成功し、実用レベルの精度と即時性が確認された。
研究チームは「この技術は、単なる音声の代替を超え、ユーザーの意図や感情までも伝える真のコミュニケーションの回復を可能にし、音声障害を持つ人々が再び社会と繋がるための革新的なツールになり得る」と述べている。今後は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脊髄損傷など、他の原因による発話障害への適用拡大を目指すとともに、より多様な言語や騒音環境下での堅牢性を高め、早期の社会実装に向けた開発が期待される。
参照記事:
Wearable intelligent throat enables natural speech in stroke patients with dysarthria
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