てんかんは脳神経細胞の過活動によって発作を繰り返す神経疾患で、世界人口の約1%が罹患する。てんかん患者の大半は薬物治療が可能だが、およそ2〜3割の患者は薬物治療に反応しない。薬剤耐性のてんかん症状をコントロールするために行われる脳外科手術では、MRI画像検査によって、主要な原因となる脳の異常「限局性皮質異形成(FCD)」を特定することが重要となる。英ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)を中心とした国際研究チームは「MRIスキャンからFCD部位を検出するAI」を開発している。
BRAIN誌に報告された同研究は「MELD(Multicentre Epilepsy Lesion Detection)」と呼ばれるプロジェクトで、世界22のてんかんセンターから集められた1,000名以上の患者におけるMRIスキャンから、FCD部位の特徴を定量化し、健常な脳とFCDを識別する「MELDアルゴリズム」を構築した。アルゴリズムの性能を538名の症例で検証したところ、67%の症例でFCDを検出することができた。また、放射線科医の診断では異常の特定が困難であった178名の陰性所見のうち、MELDアルゴリズムは112名(63%)をFCDとして検出することができた。
UCLのKonrad Wagstyl氏は「このアルゴリズムにより、てんかんの隠れた病変を逃さず、脳手術の適応患者を増やすことができる。イングランドでは年間で約440名の子どもたちが手術の恩恵を受けられる試算になる」と語った。なお、MELDのAIツールは「3歳以上でMRI検査を受けられるFCD疑いの患者全て」に適用可能であるとし、研究プロトコルとコードの全てを公開している。
関連記事: