消防任務におけるリスクの1つに、瞬間的な延焼によって部屋全体が爆発的に火に包まれる燃焼現象「フラッシュオーバー」がある。フラッシュオーバーは消防士の主な死因として知られるが、燃え盛る火災現場においてフラッシュオーバーの兆候を適切に捉えることは容易ではなかった。
米国立標準技術研究所(NIST)や香港理工大学などの研究チームは、火災現場におけるフラッシュオーバーの発生を予測するニューラルネットワークモデルを開発した。FlashNetと呼ばれるこのモデルは、4.1万件を超える火災をデジタルシミュレーションすることで、間取りだけでなく、出火元や家具の種類、ドアや窓の開閉状況など、多数の要素を考慮して構築されている。Engineering Applications of Artificial Intelligenceから公開された論文によると、FlashNetは、米国で一般的な住宅の間取りにおいて92.1%の最大精度を示し、既存の5つの機械学習モデルを有意に上回るパフォーマンスが確認されている。
著者らは「フラッシュオーバーの予測において最も危険なのは、モデルが切迫したフラッシュオーバーの発生を見誤ること」としており、このような「偽陰性」をFlashNetは最も低くできたことを、重要な成果の1つとして強調している。現場経験のみに頼らない客観的なリスク管理手法の確立は、直接的に消防士の命を守る重要な取り組みとなる。