出産における帝王切開の発生率は世界的に増加の一途にあるものの、「母子の有害事象が明らかに減少した」とする論拠は乏しい。帝王切開の判断に至る「分娩困難症例」の定義が不十分であることが、発生率増加の一因との指摘もある。米メイヨークリニックのチームは、「陣痛中の状態変化から経膣分娩のリスクをリアルタイムに予測するAI」の研究開発を行う。
PLOS ONEに掲載された同研究では、米国内12の医療機関における妊娠・分娩を記録した大規模データベース「Consortium on Safe Labor」を基に、分娩の転帰を予測する機械学習モデルを構築した。同モデルは、入院時の年齢や体重増加、分娩進行中の子宮頸管長の変化など、779項目にわたる変数を含んでいる。検証の結果、母子にとって不利な転帰(帝王切開への移行、産後出血、羊膜内感染、肩甲難産、新生児合併症、死亡)となるリスクの予測において、子宮頸管長4cmでAUC 0.75、頸管長10cmでAUC 0.89と、分娩の進行ととともに予測性能が上昇することが示された。
本研究の著者でメイヨークリニックの産婦人科医Abimbola Famuyide氏は「この成果は、医師や助産師が分娩プロセスで重要な判断を下すためのアルゴリズム利用で最初のステップとなる。陣痛中に新しいデータを入力する度に、有害事象のリスクが自動的に再計算され、アルゴリズムはリアルタイムで機能する。陣痛過程の個別リスクを予測することで、より適切なレベルの施設に患者を転送する時間を確保できる。遠隔地の医師や助産師にとって強力なツールとなるだろう」と語った。
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