ジストニアは、意思によって制御できない「不随意運動」が起きる神経症候群で、日常生活に様々な支障を来す。根本的な治療法は乏しく、ボツリヌス毒素の筋肉内注射(ボトックス注射)で症状を抑える対症療法が第一選択となっている。さらに、ボトックス注射は患者全員に効果があるわけではなく、治療が有効な患者の判別方法は確立されていない。米Massachusetts Eye and Earの研究チームは、脳MRIから「ボトックス注射に反応するジストニア患者」を自動識別するAIプラットフォーム「DystoniaBoTXNet」を開発している。
Annals of Neurologyに掲載された同研究では、ジストニア患者284名を対象に、脳MRIを分析するディープラーニングアルゴリズムの有効性を検証している。本研究では、ボトックス注射が効果を示す患者の神経バイオマーカーとして8ヶ所の脳領域が同定された。そのバイオマーカーに基づいてボトックス注射が有効な患者を予測したところ、感度100%・特異度86.1%・総合精度96.3%を達成し、1症例当たり19.2秒で判定可能であった。
ジストニア患者はボトックス注射の有効性を判断するため、投与量と投与場所を確認する注射を複数回受ける。しかし、注射を繰り返しても有効な成果が得られない症例も少なくない。著者らは「DystoniaBoTXNetの治療効果予測は、より正確な患者選択や、用量の調整に役立ち、ボトックス注射の利用率を高めることができる」とし、治療の恩恵を受ける可能性が低い患者には、過剰なボトックス注射の代わりに他の治療法を提案できる可能性にも言及する。
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