非侵襲的に脳に電流を流すことで、記憶力や集中力といった「人の精神機能」を向上させることができるかどうかについて、長年に渡り議論が繰り返されてきた。米マサチューセッツ州に所在するボストン大学認知・臨床神経科学研究所のチームは、経頭蓋交流電流刺激(tACS)の効果を評価する100以上の研究を対象に、この技術が有望かを定量化するためのメタアナリシスを実施した。
Science Translational Medicineから公開された研究論文によると、メタアナリシスの結果、tACS治療は注意力や長期記憶、ワーキングメモリー、新しい情報を処理し問題を解決する能力、およびその他の高度な認知プロセスに中程度の改善をもたらすと結論付けている。認知神経科学者で、この論文の著者であるShrey Grover氏は「少なくとも短期的には、精神機能に大きな変化をもたらす」として、技術の高い臨床効果に言及している。
論文中では、電流が脳内をどのように流れるかをシミュレーション予測することにより、電極をより効果的なパターンで配置できるようになっていることも報告しており、刺激パターンや電極配置について最適化を図る機械学習アプローチも今後検討の進むことが予想される。
参照論文:
A meta-analysis suggests that tACS improves cognition in healthy, aging, and psychiatric populations
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