医療画像のノイズ除去にAI技術が導入されている。しかし、実際の臨床現場における利用は単に画像を「美化」することではなく、「臨床的な有用性」が重視されるべきとの意見がある。米ワシントン大学の研究チームはこれらの評価基準を「臨床的なタスクのパフォーマンス」に基づいて設定し、そのためのAI技術評価に取り組んでいる。
Medical Physicsに発表された同研究では、心臓の血流分布を断層画像として捉える核医学検査である「心筋SPECT」の画像に対し、一般利用されているAIノイズ除去技術を適用し評価した。その評価は、「ノイズ除去後の画像が正常画像とどれほど視覚的に類似しているか」、そして「ノイズ除去後の画像が、心臓の異常を検出する臨床的なタスクにどれほど有用であったか」という2つの観点から行われている。その結果、視覚的な類似性はAIのノイズ除去によって向上したものの、異常検出のパフォーマンスは改善せず、場合によっては逆に臨床的なタスクの性能を低下させることを確認した。
著者のZitong Yu氏は、「AIノイズ除去技術は、心筋SPECT画像においてノイズを意図した通りに減少させたが、医師が正確な診断を行う上で必要な、異常部位のコントラストも低下させてしまうことが分かった。これは臨床現場で望まれない結果である」と述べている。研究チームは、AI画像処理の有用性評価をタスクベースで行うべきであると提言し、その考え方に基づいた新たなノイズ除去技術の開発を進めている。
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