医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究AIによる未破裂脳動脈瘤の検出と紹介率向上

AIによる未破裂脳動脈瘤の検出と紹介率向上

米国において年間約3万人が脳動脈瘤の破裂を経験し、未破裂脳動脈瘤の有病率は約3%との推計がある。多くの脳動脈瘤は他の目的で撮影された脳スキャンで偶然発見されるため、正確な実態把握には課題がある。米国テキサス大学ヒューストン校の研究チームは、Viz.ai社のAIツール「Viz Aneurysm」を使用して、未破裂動脈瘤の検出率向上を目指した研究を進めている。

Stroke: Vascular and Interventional Neurologyに発表された同研究では、1,191件の脳血管造影CTを対象にViz Aneurysmを適用した。その結果、50件のケースで「4mm以上の未破裂脳動脈瘤」が疑われフラグが立てられた。そのうち31件のケースでは実際に36箇所の動脈瘤が確認されている。診断された動脈瘤径の中央値は4.4mmで、5年以内の破裂リスクは平均2.4%であったという。

この36箇所の動脈瘤のうち、24箇所は日常診療で要経過観察とされ、破裂リスクに注意を要する症例の多くが、専門医への紹介が行われていない現状が浮き彫りになった。この研究の主著者のHyun Woo Kim医師は、「Viz Aneurysmが導入される前には、未破裂脳動脈瘤の専門医への紹介率は予想よりかなり低かった。AI技術によるスクリーニングと臨床医へのアラート機能を組み合わせることで、動脈瘤の検出とフォローアップを大きく改善させることが期待できる」と語った

参照論文:

Machine Learning–Enabled Detection of Unruptured Cerebral Aneurysms Improves Detection Rates and Clinical Care

関連記事:

  1. Viz.ai – 脳卒中診断AIをオハイオ州に導入
  2. 腹部大動脈瘤検出AI「Viz Aortic」 – 米国病院で初採用
  3. Viz.aiが脳灌流機能を強化へ
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事