米カリフォルニア・ナノシステム研究所のチームは、生物学的な脳を物理的にモデル化した実験的コンピューティングシステムが、93.4%という高精度で「手書きの数字」を識別することを明らかにした。カリフォルニア・ナノシステム研究所は、15年に渡り、計算のための新しいプラットフォーム技術を開発してきており、本研究成果はこの一端となる。
Nature Communicationsに掲載された研究論文によると、構成された人工脳は、銀を含むワイヤーの絡み合ったネットワークで構成され、電気パルスによって入力を受け取り、出力を生成する。個々のワイヤーは非常に小さく、その直径はナノスケール(10億分の1メートル)で測定される。現在のコンピューターは、電子が流れても位置が変化しない原子から作られた個別のメモリと処理モジュールを含み、研究チームの構成するシステムとは全く異なる。対照的に、ナノワイヤーネットワークは、刺激に応じて物理的に再構成され、原子構造に基づいたメモリがシステム全体に広がっている。ワイヤーが重なり合う部分では、接続が形成されたり切断されたりする。これは、ニューロンが互いに通信する生物学的な脳シナプスの挙動に類似している。
シドニー大学の共同研究者らは、入力を提供し、出力を解釈するための合理的なアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムはダイナミックに変化し、同時に複数のデータストリームを処理できる。機械学習システムのベンチマークによく使われるデータセットとして、手書き数字の画像を用い、ナノワイヤーネットワークのトレーニングとテストを行った。画像は、1000分の1秒の電気パルスを使い、ピクセルごとにシステムに伝えられ、結果として高精度な識別を実現している。
継続的な適応と学習が可能となる、物理システムに組み込まれた「脳のようなメモリと処理」は、遠く離れたサーバーとの通信を必要とせずに複雑なデータをその場で処理する、いわゆる「エッジ・コンピューティング」に特に適する可能性がある。
参照論文:
Online dynamical learning and sequence memory with neuromorphic nanowire networks
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