医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例緑内障診断の最前線—機械学習モデルが重症度を見極める

緑内障診断の最前線—機械学習モデルが重症度を見極める

今までの光干渉断層計(OCT)画像を用いた緑内障の診断AIでは、緑内障の重症度を分類するものは無く、また各特徴量の重要度を示すモデルは存在しなかった。このほど、豪ニューサウスウェールズ大学の研究チームは、緑内障診断と重症度分類が可能な高精度の機械学習モデルを発表した。本成果Scientific Reportsで公開されている。

同研究では、健常者334例と緑内障268例(重症度別:初期86例、中期72例、後期110例)のOCT画像を用意し、網膜領域(網膜神経線維層(RNFL)、網状層および黄斑)の分布・厚さなどの空間的特徴に加え、RNFLに対し周波数解析を施した特徴量を用いて、重症度分類の教師あり学習を行った。複数の機械学習モデルを比較した結果、サポートベクターマシンの精度が最も高く(AUC値0.97)、特に初期および中期の緑内障診断において医師の精度を上回っていた。また、SHAP分析から「RNFLの対称性」「RNFL下層の厚さ」が緑内障診断に重要な特徴量であることが示唆された。さらに本研究チームは、臨床現場で利用可能なアプリの開発も行っている。

著者らは「医師の診断がばらつきやすい初期の緑内障を検出できることは、本モデルの優れた点である。また、従来の深層学習と異なり、機械学習によって特徴量の説明可能性が上がったことは診断支援において価値がある」と述べている。今後は、年齢や眼圧等の特徴量を考慮しモデルの精度を高めると共に、アプリをOCT検査機器に組み込むことを目指すとしている。

参照論文:
OCT-based diagnosis of glaucoma and glaucoma stages using explainable machine learning

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R.A.
R.A.
東京大学医学部医学科。医学を学ぶ傍ら、機械学習や深層学習に関心を持ち、シンクタンク・AI企業でのインターンにて、データ分析や社会実装の現場を経験。テクノロジーを活かした知の発掘,医療の質向上の実現を目指している。
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