造影剤は病変の発見を容易にする一方で、副作用などの懸念から、なるべく患者負担の少ない用量での使用が望まれている。特に脳の潜在性転移の検出では、高用量造影MRIが有用であることが知られているが、先日2月19日、ディープラーニングを用いて通常の造影MRI T1強調画像(T-SD画像)から「2倍量造影画像(A-DD画像)」を生成することで、読影精度が向上したという研究成果がInvestigative Radiologyに発表された。
独ボン大学や米ハーバード大学などの共同研究チームが行った本研究では、脳転移を有する患者の非造影画像/低用量造影画像/T-SD画像を用いて、画像処理に適したディープラーニングモデル(U-Netモデル)を学習し、30人の患者のT-SD画像から造影効果を抽出して2倍に増幅した画像:A-DD画像を生成した。4名の医師(放射線科医2名、フェロー、研修医)が両画像を用いて読影を行った結果、A-DD画像を併用する方が、より多くの転移を検出可能という結果が得られた。放射線科医では感度が12.1%上昇し、経験の浅いフェローや研修医では、7-12%程度多くの転移を発見できた。また、フェローや研修医の読影の感度は、T-SD画像のみを用いた放射線科医の読影と同程度まで向上していた。とりわけ5mm以下の転移に対する感度の上昇が顕著であった。
著者らは「AIの補助により、読影精度を高めることに加え、造影剤の使用量の削減に繋げられる可能性がある」と述べている。今後は他の画像診断モダリティへの応用や検証が望まれるだろう。
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