大動脈弁石灰化の定量は、大動脈弁狭窄症(AS)の重症度評価や心血管リスク予測、治療方針の決定に不可欠である。従来、Agatstonスコアを用いたマニュアル評価が標準とされてきたが、非造影CTを必要とし、放射線被曝の増加や作業の煩雑さが課題だった。韓国・ソウル大学の研究チームはこのほど、深層学習モデルと機械学習モデルを組み合わせ、造影冠動脈CT(CCTA)を用いた大動脈石灰化の自動定量化手法を開発し、その成果をScietific Reportsに発表した。
本研究では、177名の患者データを用いて、CCTA画像から大動脈弁領域を自動抽出し、最適化したHU(Hounsfield Unit)閾値を適用することで精度の高い石灰化の自動定量を実現した。具体的には、まず深層学習モデル(DeepLab v3+)により大動脈弁をセグメンテーションし、機械学習モデル(XGBoost)を用いて代表的なCT値を算出した。その後、この代表CT値の1.45倍を超える領域を石灰化と判定することで、従来のAgatstonスコアに類似した加重スコアを算出した。結果として、重度ASの分類では感度88.6%、特異度91.1%、陽性的中率(PPV)88.6%、陰性的中率(NPV)91.1%を達成した。これは、従来のマニュアル評価と比較して、作業の標準化や作業者への依存の低減が期待される結果となった。ただし、低密度の石灰化や血流の高CT値領域の誤検出など、一部のケースで誤判定も見られた。
研究者らは「本技術は、非造影CTを使用せずに大動脈弁石灰化を正確に測定できる新たな選択肢を提供し、臨床現場での診断プロセスを効率化できる可能性がある」と述べている。
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