医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例Mpoxの皮膚病変数をカウントするAI

Mpoxの皮膚病変数をカウントするAI

Mpox(旧称:サル痘)は、エムポックスウイルスによって引き起こされる急性発疹性疾患である。WHOのガイドラインでは、Mpoxの重症度を皮膚病変の数によって評価することが推奨されているが、目視による病変のカウントは労力を要し、正確性に欠けるという課題がある。この問題を解決するために、アメリカ、コンゴ、ラトビアの共同研究チームは、深層学習を用いたセグメンテーションによるAIモデルを開発した。

Journal of Medical Imagingに掲載された論文によると、18名のMpox患者から66枚の臨床写真を取得し、UNet++に加えて3つのインスタンスセグメンテーション(Mask R-CNN、YOLOv8-seg8、E2EC)を訓練し、そのパフォーマンスを評価した。Mask R-CNNのF1スコアは0.75、YOLOv8は0.75、E2ECは0.70、UNet++は0.81と高精度な結果となった。また、UNet++、Mask R-CNN、YOLOv8を組み合わせたアンサンブルモデルのF1スコアは0.78であり精度の改善を示さなかった。定性的評価では、小さい病変を見逃しがちであること、爪やしわを病変と見間違えるなどのエラーが確認された。

 本研究では、インスタンスセグメンテーションとセマンティックセグメンテーションが同様のパフォーマンスを示した。筆者は、「今回の研究では一人の評価者によってMpoxの病変評価が行われたため、評価者による結果の相違が考慮されていない。また被験者全員の肌タイプがダークスキン(タイプⅥ)であり、他の肌タイプへの一般化も必要だ」と述べている。

参照論文:

Mpox lesion counting with semantic and instance segmentation methods

関連記事:

  1. PoxApp – mpox(サル痘)の無償AI診断ウェブアプリ
  2. サル痘の皮膚病変を識別するモバイルAIアプリ
  3. Moskeet – 感染症と闘うAIスマート蚊取り

Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
RELATED ARTICLES
spot_img

最新記事

注目の記事