近年、妊娠中に発症する糖代謝異常「妊娠糖尿病(GDM)」を早期に予測し、生活習慣介入を前倒しで行うことで母子の合併症を減らす取り組みが注目されている。しかし、現在の標準スクリーニングである24~28週の経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)は侵襲的かつ感度が限定的で、より早期のリスク把握が求められている。そこでオランダの研究チームは、睡眠中の心拍変動を初期妊娠(6~15週)に計測し、従来のリスク因子と組み合わせた機械学習モデルでGDM発症リスクを予測する手法を検証し、その結果をnpj Woment’s Healthで公開した。
米国の大規模出生コホート「nuMoM2b」から、OGTTと標準的家庭用睡眠試験を受けた2,748名(GDM121名)を解析対象とし、年齢・BMI・人種・家族歴などNIH推奨の7項目リスク因子と、睡眠中の心拍変動情報を示す52の統計量を入力特徴量とした。ロジスティック回帰モデルは、リスク因子のみでAUC0.69、睡眠時心拍変動情報のみでAUC0.65、両者を結合するとAUC0.73を達成し、NIHガイドライン(AUC0.63)を上回った。特に、平均心拍数や副交感神経の活動指標である「RMSSD」、自律神経の短期/長期のバランスを表す「SD1/SD2」などの心拍変動情報がGDM予測に寄与し、機械学習による特徴重み付けで早期リスク評価の有用性を示した。
「睡眠中の心拍変動情報は非侵襲かつ家庭環境で連続計測可能な新たな生理マーカーになり得る。今後は、より多様な人種・社会経済集団での検証や、連続モニタリングによる睡眠時心拍変動の時系列解析を進め、手軽なウェアラブル機器での実用化や、個別化された妊娠ケアへの応用を目指す」と著者らは強調した。
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