医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例5年以内の乳がん発生リスクを予想するAI - ワシントン大学

5年以内の乳がん発生リスクを予想するAI – ワシントン大学

マンモグラフィ画像だけで女性の5年以内の乳がん発症リスクを算出するAI「Prognosia Breast」がFDAのブレークスルー機器指定を取得した。従来の質問票ベース予測は精度が低く、早期発見の妨げとなっていたが、ワシントン大学医学部の研究チームは画像解析と年齢情報のみで従来手法の2.2倍の精度を実現し、全国ガイドラインと整合する「絶対リスク」を提示できる点が評価された。

Progmosia Breastは2Dマンモグラフィと3Dトモシンセシスの両方に対応し、既存の読影ワークフローへシームレスに組み込める設計となっている。数万例の過去画像から機械学習で微細な前がん兆候を検出し、乳がんリスクが3%以上の女性を抽出して追加検査や予防療法へ誘導する。乳がん検査はインフラが既に全米で整備され、米国女性の75%以上が定期撮影を受けているにも関わらず、乳がんの発見が遅れるケースが34%もあるのが現状だが、本AIはこの状況を改善し得る。試算では、画像取得時に本AIで追加解析するだけで、MRI検査やタモキシフェン投与など個別のリスク低減策を早期に提案可能となる。

開発者のグラハム・コールディッツ医師は「世界中どこで受診しても均質なリスク予測を提供し、乳がん予防を一変させる」と強調。2024年設立の企業Prognosiaは多施設共同試験を推進し、リスクスコアを用いた臨床試験を予定。AIと既存検診を融合したハイブリッド診療が、乳がん死亡率を一段と引き下げる未来を拓こうとしている。

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1.片寄駿 旭川医科大学医学部卒(MD)、Columbia University研究員、Accenture, LPIXELにて機械学習エンジニア、医療AIスタートアップ経営など。
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