医薬品の副作用(ADR)は世界的に入院や治療中断の大きな要因だが、従来手法ではまれ・遅発性の有害事象を見逃しやすい。そこでソフィア医科大学の研究チームは、薬の化学構造だけからADR発生確率を予測する機械学習モデルを開発し、Pharmacia誌で報告した。
医薬品の副作用や有害事象などの情報データベースであるDrugBank、MedDRA、SIDERのデータを統合し機械学習モデルに学習させ、入力には分子構造を表すSMILESから導いた特徴量を使用した。対象とする副作用は肝毒性、腎毒性、心毒性、神経毒性、高血圧、光線過敏の6種類とし、既知薬と未学習薬で検証した。結果、全体として一貫した性能を示し、例えばエリスロマイシンの肝毒性を高確率で的中させた。一方でシスプラチンは高血圧を正しく示唆したものの、腎毒性を過小評価し光線過敏を過大評価するなど、学習データの偏りや構造の特殊性に伴う限界も見られた。
研究チームは「AIは従来手法の代替ではなく補完であり、前臨床段階のふるい落とし、個別化安全性評価、規制当局の迅速対応に資する」とコメントしている。今後は化合物・ADRの多様性拡充、薬物動態や用量、相互作用、電子カルテデータ等の実臨床データ統合、説明可能性(SHAP等)の強化を進めるとのことだ。
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