医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例アルツハイマー病AIモデルの誤分類分析

アルツハイマー病AIモデルの誤分類分析

脳構造MRIを用いたアルツハイマー病(AD)の人工知能診断システムにおける分類精度と限界を分析した研究がRadiology: Artificial Intelligence発表された。研究チームは3,258例のMRI画像を5つの多施設データセットから収集し、3D Nested Hierarchical Transformer(3DNesT)モデルを含む複数のコンピュータ支援診断(CAD)システムの性能を評価した。

3DNesTモデルは10分割交差検証で90.1±2.3%の精度を達成し、3つの外部データセットでそれぞれ82.2%、90.1%、91.6%の精度を示した。しかし重要な発見として、偽陰性(FN)群223例のうち97.3%が少なくとも1つの他のCADモデルでも誤分類され、86.1%が半数以上のモデルで、46.2%が全てのモデルで誤分類された。FN群は真陽性(TP)群と比較してMMSEスコアが有意に高く(FN:21.4±4.4、TP:19.7±5.7、P<0.001)、脳萎縮が最小限で認知機能がより保たれていた。興味深いことに、アミロイドβ(FN:705.9±353.9、TP:665.7±305.8)やタウ(FN:352.4±166.8、TP:371.0±141.8)の負荷レベルには群間差がなかった。モデル解析により、TP群では典型的なADパターンである広範囲の脳萎縮が観察されたのに対し、FN群では萎縮が最小限であることが確認された。

研究者らは、FN群が非定型的な構造MRIパターンと臨床特徴を示すことで、構造MRIのみに基づくCADモデルの診断性能を根本的に制限していると結論づけた。この知見は構造MRIによるAD診断の限界を明らかにし、将来的にはマルチモーダルデータの統合と縦断的研究による診断精度向上の必要性を示唆している。

参照論文:
Structural MRI-based Computer-aided Diagnosis Models for Alzheimer Disease: Insights into Misclassifications and Diagnostic Limitations

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