光干渉断層撮影(OCT)は、眼の微細構造を可視化し、失明につながりうる眼疾患の診断に不可欠な検査機器である。近年、OCTベースの眼疾患診断におけるディープラーニング(DL)の応用は一定の研究成果をあげているが、臨床応用まで十分に至っていない。研究チームは、臨床と研究の間に存在するギャップを明らかにし、臨床導入のための解決策を提案することを目的としてレビューを実施した。
本論文では、OCTを用いたDL応用の中でも特に重要なタスクである疾患分類と画像セグメンテーションに焦点を当てている。疾患分類は眼科疾患の早期発見に直結し、画像セグメンテーションは病変領域の定量評価に不可欠である。加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫といった疾患は複数のデータセットが存在する一方で角膜炎や中心性漿液性脈絡網膜症などの疾患は比較的データセットが少ないという眼疾患の偏りを指摘した。また、約3割のデータセットは非公開データセットであり共同研究の障壁となっていることを指摘している。さらに、異なるOCT機器間での汎用困難性(DICE係数で最大15%低下)、OCTデータ量の不足、ラベル付け作業の負担、モデルのブラックボックス性といった課題についても議論している。
本レビューでは、DLによるOCT解析が精度と効率の面で大きな進歩をもたらしたと評価する一方、臨床応用には依然として課題が残ると指摘する。特に、データセットの多様性の確保、モデルの解釈可能性向上、計算効率改善が今後克服すべき重要な障壁であると述べた。将来展望としては、異なるOCT機器間での汎用性、自己教師あり学習などを用いたデータ駆動型モデルの強化、OCTと他モダリティを組み合わせたマルチモーダル解析、軽量かつ高性能なモデル開発と、多施設共同での検証体制の整備などが、AIをOCT診断支援として定着させる鍵になるとしている。
参照論文:
A comprehensive review of deep learning in OCT image segmentation and classification
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