脳に損傷を受けた患者が、指示に無反応であっても、脳だけが活動している場合がある。思考と運動の解離(cognitive motor dissociation)として知られるその状態を、機械学習アルゴリズムで脳波から見つけ出し、回復の見込みについて検討した研究が、2019年6月27日にNew England Journal of Medicineに報告された。
米メディアDocWire Newsによると、コロンビア大学とニューヨーク大学の共同チームが、「手を動かせ」という指示に無反応な脳損傷患者104名の脳波記録に機械学習を応用した。16名に脳の活動がみられ、8名(50%)が退院前には指示に従うことができるレベルに回復した。脳の活動がみられなかった88名は23名(26%)が回復。1年が経ったあと、「日中に8時間自立して過ごせる」程度までの回復で比較すると、脳活動あり7名/16名(44%)と脳活動なし12名/84名(14%)であった。
この研究から、脳損傷の初期で昏睡状態にみえる患者の脳活動を正しく調べ、将来的な回復の見込みをある程度予想できる可能性が示された。中国発の「昏睡からの回復を予測するAI(過去記事)」と比較してみるのも興味深い。