心房細動は不整脈の一種で、放置すると脳梗塞や心不全のリスクを高める。治療介入が必要となる重要な疾患だが、心房細動は不整脈の発現タイミングや持続時間がまばらで、平時には心電図変化がみられないことが診断の遅れを招いていた。米メイヨークリニックの研究チームは、非発作時の心電図からも心房細動の存在を識別できるAIアルゴリズムを構築した。
学術誌The Lancetに公表されたチームの論文によると、18万人を超える患者から約65万件の「不整脈発作のみられない心電図画像」を用いてこのアルゴリズムを導いたという。AIは、医師の目には正常所見にしか見えない心電図波形からも、潜在的な心房細動の存在を83%の正確性をもって識別できた。
非発作時にも心房細動を識別できるようになることは、診断の見逃しや遅れを直接的に予防する。持続的な心電図測定を実現するデバイスなど、比較的専門性の高い医療的設備の乏しい環境においても大きな助けとなるだろう。凪いだ海から昨日の嵐を見分ける目 – 医療AIの革新的なアプローチは他疾患にも拡張されていくに違いない。