医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例心電図で健康寿命がわかる時代へ - 生理的年齢をAIが解析

心電図で健康寿命がわかる時代へ – 生理的年齢をAIが解析

1901年にWillem Einthovenによって発明された心電図は、人々の健康管理を長らく支えてきた。その基礎的な検査方法には、AI解析の新時代を迎えたことで新たな可能性が見出されてきている。従来では読み取るのが難しかった疾患を特定したり、患者のリスクを正確に分類するなど、患者にとって検査の負担が少ない心電図で分かることが増えてきた(過去記事)

アメリカ心臓協会(American Heart Association)の学術誌Circulation:Arrhythmia and Electrophysiologyに発表された新研究では、心電図のAI解析で、患者の性別を特定し、さらに「生理的年齢」を推定できることが示された。「生理的年齢」は単に時間経過を示す実年齢とは異なり、個人差のある老化や基礎疾患を反映して健康状態の指標となる年齢の考え方である。

同研究では、畳み込みニューラルネットワークを使用したシステムでAUC0.97の高い精度で男女の性別を識別し、心電図に差が出ると言われてきた男女の性差を証明した。そして、患者の実年齢と約7年未満の誤差で生理的年齢を推定し、7年を超える差がみられた患者集団では心臓の駆出率低下・高血圧・冠動脈疾患が相関をもって含まれた。このことから、AIによって推定された生理的年齢は、患者の全体的な健康状態の尺度として役立つ将来性が期待される。

Medical Xpressでも、同研究の高い価値が紹介されている。メイヨークリニック研究グループの医師Kapa氏はインタビューに対して「AIで強化された心電図解析は他の検査方法で気づくことができなかった疾患検索も可能とします。心電図が生理的年齢の情報を含むという本研究は、驚くべき潜在的な役割を果たし、生物学の基礎を理解するための新しい科学領域を育てるかもしれません」と語った。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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