近年、注目が続く比較的新しい医療用画像技術に「光音響イメージング」がある。原理的には超音波画像に近く、生体内に送ったレーザー光により組織が熱膨張し、そこから発生する超音波をセンサーが拾い、組織内の血管構造などを画像化する技術である。血管構造が特徴的な悪性腫瘍の検索に活用されることが多く、生体の表面に近いものほど画像認識能が高い。レーザーとセンサー技術に合わせ進歩を遂げつつあるが、レーザー光のエネルギーが届きにくい組織の深部には有効度が低下することや、画質がセンサーの質と数に依存する点で、改良の余地を抱える。患者に対する検査の侵襲度が極めて低く、従来の超音波検査を補完する役割が期待されている。
WORLD ECONOMIC FORUMのニュースによると、AIが画像の歪みを大幅に補正することで、センサー数を512から、128あるいは32個程度まで減らしても、同等の検査画質を得られるという、チューリッヒ大学からの研究が紹介されている。画像のノイズや歪みは、訓練済みのニューラルネットワークの働きで補正される。また、レーザーで惹起されて組織から返ってくる音響の方向に制約があったが、多方向からの音響をアルゴリズムによって処理することでも、画質の向上が期待できるという。
研究グループは、このアプローチで光音響イメージングの飛躍につながることを願うと共に、同じ方法論で他の画像検査においても画質向上に応用できると考えている。現在AIアルゴリズムはマウスの画像で機械学習を行なっており、次のステップとしてヒトの光音響イメージングに適用してゆく。組織内血管構造や酸素化の局所的変化を捉えることは、がんの早期診断に役立つと考えられ、血管内の脂質含有量が心血管疾患の早期発見に潜在的なマーカーになるなど応用が期待されている。