外傷性脳損傷はこれまで、専門医による頭部CT画像の読影によってその重症度判定がなされてきたが、多くの場合でこれは定量的な評価ではなかった。英ケンブリッジ大学などの共同研究チームは、脳損傷の程度を病変の種類や大きさ、位置関係などから画像的に定量評価を行うAIアルゴリズムを開発した。研究成果は学術ジャーナルThe Lancet Digital Healthにて14日公開されている。
研究チームの論文によると、畳み込みニューラルネットワークを用い、欧州60施設に及ぶ外傷性脳損傷の患者データからアルゴリズムをトレーニングしたという。AIは病変の部位・大きさ・容量などを正確に捉え、進行の予測を行うことができるようになったが、これはインドで行われた500名の患者に対する妥当性の検証試験でも同等の成果を示していたとのこと。
AIによる医療画像の客観的かつ自動的な評価は、臨床医の診断と治療方針の策定にとって大きな補助となり得る。また救急の現場など、疾患リスクを精緻に評価するには時間が不足する場面での潜在的な有効性は特に高い。現時点では研究用としてのテクノロジーの域を出ないが、チームは実臨床現場で活用される診断ツールとしての展開までを見据えている。