米国では糖尿病の有病率が10%にも迫ろうとする。全身の微小血管に障害を起こすという疾患特性から、いわゆる三大合併症として、網膜症・腎症・末梢神経障害が患者の生活を損ない、社会的・経済的な損失は莫大なものとなる。中でも末梢神経障害と足病変に焦点を当て、早期発見のための有効な検査法として、AIと赤外線サーモグラフィを組み合わせた手法をVisionQuest Biomedical社が開発した。
VisionQuestのニュースリリースによると、サーモグラフィで末梢神経障害・足病変の早期兆候を検出する検査システムは、ニューメキシコ大学との臨床研究を完了している。その検査手法は、足裏の冷却からの温度回復パターンを解析し、末梢神経障害患者での不均一な温度回復を捉える(参照: VisionQuest)。従来の検査手法である音叉による感覚試験や針筋電図などは、神経障害の進行した後期には有用であるが、早期診断での感度は不十分であった。同システムは臨床指標が明確ではない初期段階の患者を、日常診療の場で検出することを狙いとしている。
VisionQuestは他にも糖尿病網膜症をAIで画像評価するシステムを開発している。そこからは糖尿病の包括的な医療アクセスに対して、検査方法からの革新を目指す姿勢がうかがえる。糖尿病をめぐる診断と治療には貧困や経済格差、あるいはその国の総合的な公衆衛生事情を反映する側面もあるため、効率的で費用対効果の高い検査手法に対する期待はこれからも増していくだろう。