医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例前立腺がん患者の精神的苦痛をソーシャルメディアから拾い上げるAI研究

前立腺がん患者の精神的苦痛をソーシャルメディアから拾い上げるAI研究

がん患者の精神的苦痛に対して、臨床現場では洞察が欠けてしまうことがある。そのような個々の患者のニーズをどのように拾い上げるか。がん患者が自身の心情を表現する場に、オンライン・サポート・グループ(OSG)というソーシャルメディアの亜種があり、そこで専門的な助言・支援を受ける枠組みがある。豪ラ・トローブ大学で開発されたのは、OSGのような場での発言からがん患者の深い感情などを検出・分析するAIシステム「Patient-Reported Information Multidimensional Framework(PRIME)」である。

ラ・トローブ大学のニュースリリースによると、PRIMEを用いることでグループセッション中における発言内容などから「患者の苦痛(distress)」を78%の精度で検出することができた。患者集団は前立腺がんの男性であり、時間の経過とともに、疾患の情報や感情的な支援を求める行動から、やがて他の患者への情報提供や感情支援へ移行する様子も観察できた。同研究の手法は自然言語処理からの機械学習ベースであり、成果はオープンアクセスの学術誌PLoS ONEに発表されている。

ソーシャルメディアをPRIMEのようなシステムで補完することで、患者の期待すること、個別化された意思決定の補助、感情的なニーズを拾い上げるための方向性が示された。自然言語処理をベースとしたプラットフォームは、テキストが用いられる状況であれば、前立腺がん以外の病気に対しても拡張して応用できる可能性を持つ。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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