がん患者の精神的苦痛に対して、臨床現場では洞察が欠けてしまうことがある。そのような個々の患者のニーズをどのように拾い上げるか。がん患者が自身の心情を表現する場に、オンライン・サポート・グループ(OSG)というソーシャルメディアの亜種があり、そこで専門的な助言・支援を受ける枠組みがある。豪ラ・トローブ大学で開発されたのは、OSGのような場での発言からがん患者の深い感情などを検出・分析するAIシステム「Patient-Reported Information Multidimensional Framework(PRIME)」である。
ラ・トローブ大学のニュースリリースによると、PRIMEを用いることでグループセッション中における発言内容などから「患者の苦痛(distress)」を78%の精度で検出することができた。患者集団は前立腺がんの男性であり、時間の経過とともに、疾患の情報や感情的な支援を求める行動から、やがて他の患者への情報提供や感情支援へ移行する様子も観察できた。同研究の手法は自然言語処理からの機械学習ベースであり、成果はオープンアクセスの学術誌PLoS ONEに発表されている。
ソーシャルメディアをPRIMEのようなシステムで補完することで、患者の期待すること、個別化された意思決定の補助、感情的なニーズを拾い上げるための方向性が示された。自然言語処理をベースとしたプラットフォームは、テキストが用いられる状況であれば、前立腺がん以外の病気に対しても拡張して応用できる可能性を持つ。