早産児の合併症で、生後数週間で突発的に発生する腸疾患「壊死性腸炎 Necrotizing enterocolitis (NEC)」はよく知られている。NECの原因は完全な特定に至っておらず、腸管の損傷と細菌の侵入から腸管穿孔や敗血症を引き起こし、致死率は15-30%といわれ、生存した乳児も長期に影響を受ける。便の細菌情報を解析する「マイクロバイオーム(microbiome)」に機械学習を組み合わせて正確かつ早期にNEC発生を予測する研究が、コロンビア大学の研究チームらによってACM-CHIL 2020 学術集会で発表されている。
コロンビア大学のニュースリリースによると、従来は予測困難であった早産児のNEC発生を、今回の新研究によって少なくとも24時間前に75%の症例が予測可能になる結果が得られ、AUCは0.9を超えた。便のマイクロバイオームを解析する機械学習手法には教師あり学習の一種multiple instance learning(MIL)が用いられている。NECリスクの高い乳児に早期介入が可能となれば予後の著明な改善につながることが期待される。
研究チームによると、乳児のマイクロバイオームが出生後に劇的な変化をする中で、その多様性が高いほど健康に寄与し、一部の早産児ではその多様性の問題がNEC発症に関連しているという仮説に基づいて同研究は進められた。研究チームではNEC発症前にリスクを識別するプラットフォームの開発と臨床試験を計画しており、筆頭著者であるThomas A. Hooven氏は「早産児の両親や医療チームがNECの恐怖に怯えることがなくなる未来を初めて思い描くことができた」と述べている。