開発中のがん治療薬のうち、米FDAの最終承認を獲得できるのはわずか4%と言われている。腫瘍細胞の複雑さに対し、どの薬剤が最適な働きをするか、完全な予測はいまだに難しい。そのような課題に対し、学術誌 Cancer Cellに「ヒトがん細胞にディープラーニングモデルを用いた薬剤反応と相乗効果の予測」が10月20日付で発表されている。
カリフォルニア大学サンディエゴ校のニュースリリースでは、同大を中心としたグループによって開発されたそのAIシステムを紹介している。システムは「DrugCell」と呼ばれ、1,235のがん細胞株に対する684種類の薬剤反応を学習している。システムへ腫瘍に関するデータを入力することで、薬剤に対する腫瘍の反応を制御している生物学的な代謝経路と、最適な薬剤の組み合わせを提示してくれるという。
同大では、患者から採取された腫瘍の生検サンプルから遺伝子配列を調べ評価する、Molecular Tumor Board(分子腫瘍委員会)が機能している。いわばDrugCellはその委員会をシミュレートしているようなものと言える。DrugCellの導いた結果の一部は実験室レベルで検証されており、今後は実際の臨床でテストしていくことをグループでは計画している。