嚢胞性線維症(cystic fibrosis: CF)は、生後間もない時期から粘膜の機能障害で肺炎や気管支炎を繰り返す。遺伝性の希少疾患で、日本でも出生約60万人に1人の指定難病とされている。根本的な治療は困難で、繰り返した炎症から肺組織が破壊され、いずれ呼吸不全に至る。
ケンブリッジ大学のニュースリリースでは、「機械学習ベースでCFの臨床経過を予測する」最新研究を6つ紹介している。英国のCF患者ほぼ全員が登録されているデータベースには、遺伝子型・呼吸機能・感染症の経緯などが蓄積され、機械学習手法を探究するための豊富な土壌がある。2019年に生まれた英国CF患者で49歳を超えて生存できる可能性は約半数、という厳しい現状に対し、機械学習によって得られる予測は、患者の日々の管理と負担を軽減し、期待余命を延ばす可能性をもつ。
急速に進歩してきた世界クラスの機械学習アプローチは、従来の課題を克服し実用に耐えうる臨床応用が期待される。CFという疾患は「治療が困難な慢性疾患」として最適な研究対象の一例となる。そこで開発された手法は既にアルツハイマー病・心血管疾患・一部のがんに応用されており、大きな潜在能力を秘めていると、同分野の研究者らは考察している。