悪政新生物(がん)は、細胞分裂とアポトーシスのバランスを崩す遺伝学的変化の蓄積でもある。正常細胞のがん化を促す「がん遺伝子」と、がん発生を抑制するタンパク質をコードする「がん抑制遺伝子」は、がん発生の理解において重要な役割を果たしている。米カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の研究チームはこのほど、独自のAIアルゴリズムを利用し、これまでに検出されていなかった新しいがん遺伝子の特定に成功した。
Science Advancesにて先週公開された研究論文によると、DORGEと呼ばれるこのアルゴリズムによって予測されたがん遺伝子が、既知のものだけでなく、これまでに報告されてこなかった新しい遺伝子を含むことを示している。また、DORGEは、一部の遺伝子を「がん遺伝子とがん抑制遺伝子としての両方の機能を有する二重機能遺伝子」と予測しており、これがタンパク質間相互作用および薬物・化合物遺伝子ネットワークのハブで高度に濃縮されている事実も発見した。DORGEは既存の10の分析アルゴリズムと比較し、がん遺伝子予測機能について最高精度を示している。
今月JAMA Oncologyに発表されたメイヨークリニックのチームによる研究報告では、広範な遺伝子検査によって遺伝子変異を特定することは、がん患者における精密医療を加速できる可能性が強調されるなど、遺伝学とビッグデータ解析によるデータアプローチによって今、がん医療に巨大なイノベーションがもたらされようとしている。