入院中の患者は、体温・血圧・心拍数といったバイタルサイン(VS)の測定のため夜間であっても平均して4-5時間毎に睡眠から起こされてしまう。VSのモニタリングを中断することのリスクを考えると、どの患者が夜間起こされる必要がないか特定する必要があった。オープンアクセスのピアレビュージャーナルであるnpj Digital Medicineに掲載された研究では「入院患者の一晩の安定性を予測する」深層学習型予測ツールを開発し、課題を解決しようとした。
「患者を起こさない(Let Sleeping Patients Lie)」というタイトルを銘打った同研究は、米ニューヨークのファインスタイン医学研究所のグループによって行われた。213万人の入院患者と2429万回のVS測定をデータセットとして開発されたアルゴリズムは、一晩の睡眠を中断させずに患者を放置できるか安全性を予測する。このモデルは10,000人あたり2人未満の誤分類という低いリスクを達成した。たとえ誤分類された患者であっても、VS測定を行わない通常のナースラウンドによる目視で発見可能な内容であり、看護ガイドラインの一部でもそのような対処が標準的となりつつあるという。
夜間の休息を安全に確保することは患者ケアにとって重要な要素で、VS測定による睡眠の乱れは回復や退院を遅らせる可能性や、苦情につながっていた。また、病院スタッフの仕事量緩和に役立つ可能性も高い。看護師はVS記録の文章化に勤務全体の20-35%を費やし、勤務シフト時間の約10%はVS収集に充てられている推算があるという。この分野でのAIの利用は「臨床現場における身近な課題への取り組み」でありながら、一方で一連のワークフローに大きな変革をもたらす可能性を秘めている。