結核に早期診断は重要となるが、医療資源の乏しい国にこそ結核が蔓延する傾向がある。放射線の専門家が不足していたり、高解像度のデジタル画像が利用できない地域での活用を想定したディープラーニング技術として「胸部X線画像をスマホで写真撮影して結核の診断を行うアルゴリズム」が発表されている。
北米放射線学会(RSNA)2020年次総会のプレスリリースで、台湾国立精華大学の研究者らによる同研究が紹介されている。「TBShoNet」と呼ばれる結核検出モデルは、結核を含まない約25万枚の画像データセット(MIMIC-CXR)での学習と、結核を含む218枚のデータセット(Montgomery)での調整によって構築された。モデルの性能は662枚(結核336枚・正常326枚)のデータセット(Shenzhen)を5種類の携帯電話で写真撮影した画像で検証され、結核検出のAUCは0.89・感度81%・特異度84%を達成している。
スマートフォンのカメラ性能や撮影条件はRSNAのセッション発表を視聴する限り具体的に言及されておらず、研究手法の限界は議論を呼ぶかもしれない。しかし、近年のスマホはエントリーモデルでもカメラ性能の進化が著しいと誰もが実感しているであろう。そして、医療資源が乏しい国でも最低限のスマホは社会インフラとして相応に流通している。同研究のアプローチは結核以外の画像診断にも応用可能であり、時流をとらえたユニークなAI研究として続報を期待したい。