臨床検査関連の学会である米国臨床化学会(AACC)は12月13日から17日まで、2020年次学術集会をオンライン開催している。そのセッションのひとつでは、ある臨床検査室が機械学習ベースの検査を実装したプロジェクトについて講演が行われる。
AACCのプレスリリースでは、米ミシガン大学のセッション14001「アザチオプリンによる炎症性腸疾患(IBD)治療をガイドする機械学習ベースの検査<ThioMon>の実装プロジェクト」を紹介している。免疫抑制剤のひとつアザチオプリンはIBD治療に用いられ、月に数千ドルレベルの高価な生物学的製剤と比べ、月20ドルほどで費用対効果の高い治療選択肢といわれる。しかし患者ごとに用量の微調整を必要とする処方の難しさがある。同プロジェクトのThioMonは、アザチオプリンの治療効果判定として代謝物「6-TGN」を日常の臨床検査から機械学習アプローチで解析する手法を実装した。同手法は、現在IBDの治療効果判定のスタンダードである大腸内視鏡検査と同等の検査価値が期待できる成果をあげている。(同研究の基礎論文は学術誌 Journal of Crohn’s and Colitisに収載)
別の機械学習セッション34104では「臨床検査データは医療の未来にどう影響を与えているか?」という演題で、ルーチンの臨床検査からCOVID-19感染を判定する機械学習ベースの検査法について触れられている。簡便な一般検査から迅速にCOVID-19感染をスクリーニングする手法は大いに注目されている領域である(過去記事)。AIベースの技術を日常の臨床検査に統合することは医療に革新を起こす可能性を秘めているとして、AACCは同分野の研究を重視している。(報道関係者は年次学術集会への無料参加登録がリンクから可能)