聴性脳幹反応(ABR)は、聴覚神経系の刺激によって得られる電位を頭皮上で記録するもので、意識状態や睡眠状態などの影響を受けにくい他覚的検査として重要視されている。一方で、その解釈には相当の経験とトレーニングが必要となり、またヒューマンエラーに基づく不適切な解釈が謝った判断に繋がる可能性から、ABR評価の自動化は長く求められてきた。
カナダ・オンタリオ州ロンドン市に本拠を置くウェスタン大学の研究チームは、ABRを自動解析する機械学習アプローチの開発に取り組み、このほど、この研究成果をComputer Methods and Programs in Biomedicineに公表している。公開されたチームの研究論文によると、サポートベクターマシンやランダムフォレスト、勾配ブースティングなど6つの機械学習モデルによって、ABRに存在する神経学的異常を正確に特定できる手法を探索した。なかでも、複数の決定木を組み合わせて学習するXGBoostを利用してトレーニングされたモデルは、臨床的に重要な信号特徴を92%と最も優れた精度で識別することを明らかにしている。
本研究成果はABR波形の分析プロセスを自動化するための有用な知見を提供しており、将来的には耳鼻科専門医や言語聴覚士によって利用される評価ツールの導出に至ることが見込まれる。現時点で、聴覚障害を持つ子供たちをスクリーニングするための機械学習ベースのアプリケーションは実現されておらず、本研究成果を元に同領域において利用可能なツール開発が加速すること、そして願わくば本メディアの読者からも積極的な取り組みのあることを期待したい。