小児がんで最大の死亡原因となるのが脳腫瘍である。小児の脳腫瘍は約半数が後頭蓋窩の領域に発生し、外科的切除が可能であってもその後の再発リスクも高い。必要な切除範囲など手術計画の助けとなる術前診断のため、MRIスキャンは標準的な画像検査であるが、小児脳腫瘍で主要な3つのタイプ(上衣腫・髄芽腫・毛様細胞性星細胞腫)は診断上の特徴が重複し識別が困難な面があった。
英ウォーリック大学の15日付プレスリリースによると、同大学を含む多施設共同研究から「小児脳腫瘍のMRI・拡散強調画像に機械学習を組み合わせることで腫瘍のタイプをより高精度に識別する」研究成果が学術誌 Scientific reportsに発表された。見かけ上の拡散係数(ADC: apparent diffusion coefficient)マップの解析から、単純ベイズ分類器で精度85%、ランダムフォレスト分類器で精度84%をもって、主要3タイプを含む腫瘍の種類をMRI画像から分類することができた。
同研究に対して英バーミンガム大学の臨床小児腫瘍学教授であるAndrew Peet氏は「脳腫瘍を患う小児とその家族にとって初期の画像検査は非常に困難な時間であり、できるだけ早い答えが求められます。AIを組み合わせた画像スキャンで高い診断精度を提供することにより、私たちは何らかの答えを与え始められるでしょう」と語る。脳腫瘍の画像診断で侵襲的な生検を回避しようとするAI研究は、日本では京大iCeMs(過去記事2020/06/10)、米テキサス大学(過去記事2020/04/23)などの事例を参照いただきたい。